なぜ義太夫節?

日本の伝統芸能を代表する文楽と歌舞伎、そして全国各地に波及した人形浄瑠璃や地芝居(農村歌舞伎)は「義太夫節」がないと幕が開きません。義太夫節は、数ある三味線音楽の中でも「音曲の司」(三味線音楽の王者)と言われ、日本文化の基盤となった芸能と言っても過言ではありません。

 

音楽でありながらまるで演劇を観ているように、語りと三味線の演奏だけで、感情や情景をダイナミックに描き出す表現力を義太夫節は持っているのです。今から300年前の元禄時代、近松門左衛門が描いた物語を三味線に乗ってドラマチックに語ったのが、竹本義太夫でした。その表現は多くの人々の心を捉え、絶大な人気を誇った事から「義太夫節」として今に受け継がれています。太棹三味線の重厚で豊かな響き、そして全身全霊で「語る」太夫の表現力は圧倒的で、その場に存在するはずのない情景が浮かんでくる…つまり思い切り想像力が刺激されるのです。その感動は他では決して得ることのできないものです。

 

だからこそ若い世代には、時代を超えて日本の人々の心を鷲掴みにしてきた義太夫節に、是非出逢っていただきたいのです。